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ソニーロリンズ Sonny Rollins 2008 日本ツアー [jazz]

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日々、ロリンズの上っ面だけをまねたような事をしている。自分にとって彼はもはや形而上の存在であった。それだけに生のロリンズに対する飢餓感のようなものが高まっていたことはたしかだ。以前、ロリンズを生で聴いて、同時代に生きているということだけで満足してしまっていたのである。この間、ラストツアーだとか何とか聞いてもさほど聴きたいとは思わなかったのだが今回は違っていた。ロリンズにあわなければ生きている意味がないというほど飢えた状況になっていた。
 77歳だという。初めて聴いた頃は40代だったはずだ。日本公演のモヒカン刈りの逸話がなつかしい。今回、不安はあった。だめだったらそれはそれで彼の人生を回顧しようというつもりだった。ところがロリンズは全く健在であった。うれしいではないか。若武者の頃、往年時と変わらぬ衰えることのないイマジネーション、インスピレーション。既成のフレーズとかリズムにこだわらない大きな音楽。それでいて完璧なハーモニーをつかみ、音楽を構成していく即興能力。すぐにでも家に帰ってコピーしたくなるカデンツ。とにかく何もかも完全だった。楽器でうたうとはこういう事だ。楽譜など超越しているのだ。
 ある意味でロリンズのコンサートは飢餓感との戦いである。始まったとたんに「もっとロリンズを!」ともだえるのである。バックには悪いが、聴き手にとってバンドはロリンズが休憩をとるための意味以外はない。図らずもその状況を埋め合わせるべくロリンズの音が次第に空間に広がっていく。落ち着いて聴けたのは3曲目以降からだろうか。「In a sentimental mood」が始まったときは感極まった。
 いつの頃からかソロパーフォーマンスでしかロリンズの神髄は見られなくなった事は確かで、今もそうなのだ。ニューヨークのMOMAでのソロ演奏は決定的だった。テナー一本でキース・ジャレットのレベルの音楽表現ができるのは彼くらいだろう。リズムもハーモニーもロリンズがすべて一人で表現してはじめて完結する音楽なのだ。だからイントロとかカデンツでソロになったとき、空間が変わる。その瞬間に客席も息をのむ。ボビー・ブルームはたまにジム・ホールになってくれてはいたが、それでもじゃまなのだ。それから実はロリンズを聴きたいと言う場合、4ビートを聴きたいのである。速いやつね。Strode rodeなんかやられたら腰抜けちゃうね。ゆるいカリプソばかり聴きたくないのね。
 それにしても東京フォーラムはひどい。メガホンを持った係員が何か絶叫しているのだ。おそらく列になってとかここから昇れとか言っているのだろうが、がなっていることしかわからない。一流のホールでこんなことをしている国があるだろうか。音楽を聴く気分が萎えてしまう。結局あんな大きなホールに人を押し込めることが間違いなのだ。
 しかしこのロリンズの余韻でまたしばらく生きていくことができるのである。
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sachat06

東京フォーラムに入ったとたん、気分はマイナス10度ぐらいになってしまったけど、ロリンズが暖めてくれましたね。
あの完成された音楽はまったく夢のようでした。
近くで聴くためにはアメリカに行くしかなさそうですね。
by sachat06 (2008-05-20 21:14) 

ROLLING

はじめまして。

ちょっと自慢ですが私は最前列のセンターであの初日のロリンズを体感してしまいました!!!
1st,2stとでロリンズはサングラスも替えていて、1stのサングラスは透けていたのでその表情が見て取れたのはもちろんのこと、生音をしっかり体感できました!!!!!

>いつの頃からかソロパーフォーマンスでしかロリンズの神髄は見られなくなった事は確かで、~~~リズムもハーモニーもロリンズがすべて一人で表現してはじめて完結する音楽なのだ。だからイントロとかカデンツでソロになったとき、空間が変わる。その瞬間に客席も息をのむ。ボビー・ブルームはたまにジム・ホールになってくれてはいたが、それでもじゃまなのだ。

本当に同じ思いです。
ロリンズに対して、とても共感出来る方がネット上とはいえみつかり大変嬉しく思います。

by ROLLING (2008-06-20 23:59) 

herosia

ROLLING様 初めまして。最前列とはうらやましい。初日にかなり早くチケット買ったんですけどやはりロリンズは谷底で吹いてました。でも感動しました。あのときのお客さんはロリンズへの愛を感じさせる一体感がありましたね。
by herosia (2008-06-21 22:13) 

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